2024年10月6日 「リスクを冒す人」 ”Taking Risks”

説教の聖書箇所:ルツ記3章1〜18節 

 私たちは皆、何かが怖い感じることがあると思います。緊張します。心配になります。それはつまり、何かを失う危険を感じると恐れを感じるからです。評判を失う。物を失う。人との関係を失うなど。それが怖いです。

 逆に言えば、大切にするものがなければ、恐れもないはずです。何を奪われても平気だかです。でも、健全な人間は、大切にする人、ことがあります。それを失う危険・リスクことについて、多少の恐れがあって当然です。あなたは、何を失うことを恐れますか。

 ルツ記3章で、3人の登場人物は、何かを失う危険があるのを承知しつつも、本当に大切な目的を達成するために、損するリスクを冒します。私たちは彼らから何が学べるでしょうか。

一、ナオミのリスク(1〜5節)

 ナオミはイスラエルのベツレヘムへ帰って、ルツ記2章の経験を通して多少安定した生活を得ていました。創造主なる神が見事に、ルツの誠実で謙遜な働きとボアズの守りによって、ナオミとルツの短期的な必要を満たしておられました。

 ところが、中長期の将来について、どうか。ナオミもルツも未亡人です。そしてナオミは夫エリメレクの土地について権利を主張することのできない社会的立場にいます。なぜなら家族の男性が皆亡くなったのです。

 でも、ナオミはちょっと危険な目論見を考えました。「娘よ。あなたが幸せになるために、身の落ち着き所を私が探してあげなければなりません」と3章1節で計画を打ち明けました。

ルツ3:3–4 「あなたはからだを洗って油を塗り、晴れ着をまとって打ち場に下って行きなさい。けれども、あの方が食べたり飲んだりし終わるまでは、気づかれないようにしなさい。あの方が寝るとき、その場所を見届け、後で入って行ってその足もとをまくり、そこで寝なさい。あの方はあなたがすべきことを教えてくれるでしょう。」

 なぜかと言うと、2節で理由がほのめかされています。「ボアズは、私たちの親戚ではありませんか。」2章20節にも少し説明があります。「その方は私たちの近親の者で、しかも、買い戻しの権利のある親類の一人です。」「買い戻しの権利」を持つ親類は、主なる神が古代イスラエルに下さった一つの社会保証制度でした。全ての家庭は相続する土地を受け、基本的に男子が代々受け継ぎましたが、男性が亡くなり家族の支えがなくなったり、金銭的に困窮して土地を他の人に売ってしまったりすれば、「買い戻しの権利のある親類」1はその親戚に戻すために土地を買い戻す権限を持っていました。

 モーセの律法にはその親類は結婚する義務があるとは言っていません。ところが、その原則を兄弟同士に当てはめる聖書箇所があります。申命記25章5〜10節にその規定があります(特に5・6節参照)。そしてナオミは、その規定は親戚にも当てはまる期待を持っていました。申命記の箇所が広い原則として、親戚は親戚同士を助け合うと言う観点から、ボアズはルツに結婚するのがふさわしかったです。

 ところが、この計画はナオミにもルツにも危険がありました。うまくいけば二人ともは経済的に支えを得ることができます。しかし悪くいけば、ボアズは法的に束縛されないし、拒否するかもしれません。その場合、ルツは傷つき、ナオミも落胆して、二人の関係も惨めになるかもしれません。でも、ルツの将来という大切なことを求めて、ナオミはリスクを冒しました。

二、ルツのリスク(6〜10節)

 ルツは5節で承知して、言われた通りに準備します。身だしなみを整えて、ボアズが麦を脱穀する打ち場の近くで隠れました。7節では、ボアズが作業の終わりに食べて飲んで、麦の山積みの所で横になってから、ルツは「こっそりと行って、ボアズの足もとをまくり、そこに寝た」のです。

 ルツが冒した危険は最も大きかったです。幾つかの危険がありました。①二人きりで、ルツはボアズに犯される可能性がありました。2 ②また、口説きだと勘違いされて、ボアズに追い払われる可能性もありました。③たとえ、ボアズがルツの意図を理解しても、結婚したくない可能性がありました。さらに、そのどれでも起きてしまえば、ルツはボアズの畑にもう行けなくなり、食べ物を手に入れにくくなる危険もありました。

 しかし、ルツはナオミの言うとおりしてから、最後だけ自らの考えではっきりとボアズにお願いをします。

ルツ3:9 「あなたの覆いを、あなたのはしための上に広げてください。あなたは買い戻しの権利のある親類です。」

 「覆いを広げる」と言うのは慣用句で、イスラエルで結婚して守る約束をする意味でした。3 大胆な求婚行為でした。幸いな事に、ボアズはルツを責めません。むしろ、彼女の大胆さそして「誠実さ」にを褒めます。

ルツ3:10 「娘さん、主があなたを祝福されるように。あなたが示した、今回の誠実さは、先の誠実さにまさっています。あなたは、貧しい者でも富んだ者でも、若い男の後は追いかけませんでした。」

 ボアズはまだまだ壮年ですが、ルツはもっと若い男性とできたはずです。ボアズが先に死に、いずれか再び未亡人になるとルツは覚悟して、求婚していました。ルツはナオミの土地を買い戻す権力あるボアズに、自分を委ねて、ナオミにも愛、誠実さを尽くしていました。ナオミはルツのためにとボアズとの結婚を思っていたが、ルツはナオミのためにと思っていました。

三、ボアズのリスク(11〜18節)

 さて、11節以降でボアズが今度責任とリスクを取ります。ボアズはルツを人としてとても尊敬して、愛していました。11節で「あなたが言うことはすべてしてあげましょう」と言います。

 しかし、ボアズは良心的に考えて、財産絡みの事情を考えました。12節で問題を述べます。「私よりももっと近い、買い戻しの権利のある親類がいます。」権限を利用して、ルツに気をかけないで土地を得ようとするかもしれない人でした。ボアズはルツを失う危険がありました。でも、ボアズは勝手に土地とルツを手に入れてはいけない、と判断しました。

 13節でボアズは自分の計画を打ち明けました。あの親戚と、朝に交渉する。相手が買い戻しの権利を行使するなら、仕方なし。それでも、経済的にナオミとルツは守られるはず(分からないが)。でもボアズはできればナオミの亡き夫の相続の土地、そしてルツの保護者となろうと決意しています。「【主】は生きておられます」。これは神の前での誓約です。

 ボアズはルツの評判と必要を考えて、薄暗いうちに、麦をたくさん持たせて帰らせます。15節最後では、ボアズがリスクを冒し始めるために、4ベツレヘムへ向かっています。ルツほどでは決してありませんが、ボアズもリスクを取ります。

 3章16節から18節までで、ルツは家に帰り、ナオミに夜の出来事を報告します。大麦はナオミへの贈り物だったとも説明します。その麦は、ボアズがナオミに対して土地を買い戻す責任を負い、さらにルツと結婚したいことの象徴の結納の一部、と捉えることができます。ナオミはルツにじっとして、休む様に指示します。5

18節 「あの方は、今日このことを決めてしまわなければ落ち着かないでしょうから。」

 ボアズが次回、背負ったリスクに対してどんな戦略で挑むか、見ましょう。

適用

 では、ルツ記3章から私たちは、危険を冒すことについて何と教えられるでしょうか。あなたも私も、リスクを好まないでしょう。安定、安心、快適さを好みます。また、日本社会は快適で安全な状況を大分作ってきた反面、その裏には恥と損への大きな恐れが潜みます。人にどう思われるかよく気にして、気を損ねる危険を感じたら逃げたがるのは普通ではないでしょうか。

 でもナオミ、ルツ、ボアズは、本当に幸せで安心できる状況を作るためには、危険を冒さざるを得ないと分かりました。ルツはボアズに話しを持ちかけて、ボアズはあの親戚と交渉しなければ、前には進みません。リスクが必要でした。

 私たちも、泥々した人間関係では、前に進むために快適さを手放さないといけません。相手を愛するゆえに評判、また時には友人を失う危険を冒す必要があるでしょう。6波風を立ててしまい、誰かの気分を損ねてしまうかもしれません。職場で正直に語るとき、仲間外れの人をかばうとき、愛をもって人に罪や創造主との和解の必要を伝えようとするとき、何かを失うかもしれません。

 でも、本当の改善のために危険を冒す必要がありますね。神様もそう思いました。

 それゆえ、

神はそのひとり子を世に遣わし、
その方によって
私たちにいのちを得させてくださいました。
それによって
神の愛が私たちに示されたのです。(第一ヨハネ4:9)

 厳密に言うと、神様はリスクを冒されません。全てご存知で全て計画される方は、損害の「可能性」という意味で「リスク」「危険」と無縁です。神様は100%確実な損を背負って、ひとり子イエス・キリストをささげてくださいました。7人の気を損ね、評判を失うリスクすることを恐れて、動けない私たちの不信仰のためにも、イエス様が死んでくださいました。可能なでなく、確実な身代わりの代償を払って、救いをもたらしました。

 感謝しましょう!ナオミ、ルツ、ボアズが冒した危険を覚えるとき、私たちの救いのために確実な死を通り、確実な復活で勝利されたイエス様を覚えましょう。イエスを贈られた天のお父様に信頼しましょう。聖霊様に頼って、大胆に、周りの人の本当の幸せのために励み、挑もうではありませんか。8

1レビ25:23-28参照。なお、ナオミの夫エリメレクは、もしかしたら受け継がれた土地を以前の飢饉の時にお金に変えていたかもしれません。それで買い戻す権限をいちおう持っていても、それを主張する男性の対応何必要でした。

2同時期を記録する士師記19章では、強姦の記録があります。

3エゼキエル16:8、マラキ2:16参照。

4ある訳ではルツが主語ですが、本当はボアズでしょう。

5出エジプト記14:13-14参照。主による贖いも、民は黙って、立って、見ることしかできません。

6マタイ5:9-11、第二テモテ3:12参照。

7イザヤ43:3-4、エペソ1:7参照。

8招き:イザヤ43:1-4。 讃美歌:67番、506番、140番、142番 交読文:25(詩103篇)。

鳴門キリスト教会
礼拝内容(説教)